最近は国内外を問わず、女性の社会進出が進みつつあり、さまざまな分野で活躍する女性が増えました。それは競馬の世界でも同じで、体格の小さい牝馬や、華奢な女性騎手の活躍に胸を躍らせている競馬ファンは多いかもしれません。
競馬を予想するうえで気になるのは「牡馬と牝馬はどっちが強いのか」という点ですよね。
そんな疑問を解消するために、この記事では牡馬と牝馬の生物学上・レース上の違いを徹底分析しました。
注目の若手女性騎手の情報も交えながら、詳しくチェックしていきましょう。
牡馬と牝馬の生物学上の違い
まずは生物学的に見た牡馬(ぼば)と牝馬(ひんば)の違いを見てみましょう。
あくまでも一般論ではありますが、牡馬と牝馬の生まれもった特徴を知っておくことが、競馬の予想に役立つかもしれません。
体格では牡馬が牝馬を上回る
体格面においては、牡馬が牝馬をひと回り上回ることが普通です。
ただし平均値としては極端に大きな差は生まれないとされ、牡馬と牝馬が並んで立っていたとしても、両方の性別を的確に当てられる素人は少ないでしょう。
歴史上に登場する馬の多くは、牡馬です。
たとえばナポレオン・ボナパルトの愛馬で、「アルプス越えのナポレオン」にも描かれている「マレンゴ」は、アラブ種の牡馬とされます。
マレンゴはワーテルローの戦いでも活躍したと伝えられており、現在はその骨格が英国立陸軍博物館に収蔵されています。
牝馬は比較的デリケートな性格とされる
牝馬は、平均的に見ると、牡馬よりも体格面でやや劣ります。
性格的には比較的デリケートな個体が多いとされ、この点は人間の女生徒の共通点といえるかもしれません。
一方で、牡馬にも勝る運動能力を見せることがあり、競馬や馬術の世界で牡馬以上に活躍する牝馬も存在します。
ちなみに、英語「悪夢」を意味する「ナイトメア」という言葉がありますが、これを直訳したものが「夜の牝馬」です。
この由来は、スイス人画家のヒュースリーが描いた「夢魔」に由来します。
この作品は、悪夢にうなされる女性を馬がのぞき込むという構造で描かれており、これが「悪夢=牝馬」という着想につながったようです。
騙馬は去勢済みの牡馬のこと
競馬新聞などを見ていると、牡馬でも牝馬でもなく「騙馬(せんば)」と書かれた馬を見かけることがあります。
簡単にいえば、騙馬とは、去勢済みの牡馬のことです。
生物学上は牡馬ですが、中世的な特徴をもつ場合が多く、競馬の世界では、牡馬と明確に区分けされています。
去勢することによって、男性ホルモンと女性ホルモンの分泌量が変化し、騙馬は牡馬と比べて、よりしなやかでバランスのよい動きをすることが増えるとされます。
これがレースでは有利に働くことも多いため、日本ダービーをはじめとする一部G1レースでは、騙馬の出走が禁じられているのです。
競走馬としての牡馬と牝馬の違い
ここからは、競走馬として牡馬と牝馬にはどのような違いがあるのかをチェックしていきます。
競馬ファンにとっては常識かもしれませんが、レースにおいて、牝馬はやや優遇されることがあるので、牡馬と牝馬が今後で走るレースの馬券を購入する際は注意しましょう。
牝馬には2kgのハンデがつく
牡馬と牝馬が混合で走るレースの場合、牝馬が背負う斤量は牡馬と比べて、2kg少なくなります。
体格面での不利を埋めるために、牝馬のほうがより有利に走ることが許されるのです。
牝馬が牡馬を破る番狂わせの裏には、このハンデが潜んでいることを知っておきましょう。
また、女性騎手が騎乗する場合は、さらに斤量が2kg少なくなるというハンデも加算されます。
牝馬に女性騎手が乗る場合、牡馬に男性騎手が乗る場合と比べて合計で4kgも軽くなるため、さら番狂わせが発生しやすくなりますよ。
牝馬だけが出走できるレースがある
JRA(日本中央競馬会)が主催するレースのなかには、牝馬限定のレースも存在します。
重賞と呼ばれるものでは、以下のレースが牝馬限定で開催され、牡馬は出走できません。
- エリザベス女王杯
- 桜花賞
- オークス
- ヴィクトリアマイル
- 秋華賞
反対に牡馬限定で行われるG1レースは、2021年8月時点では、ひとつもありません。
このような事情があるため、とくに牝馬にとってはどのレースに出場し、どのレースで休むのかを計画することも、好成績を残すための戦略として重要です。
牝馬のほうが現役生活は長くなりやすい
サラブレッドの傾向として、牡馬よりも、牝馬のほうが現役生活は長くなりやすいという特徴があります。
これは、優秀なサラブレッドが引退後に、種馬・繁殖馬としての余生を送ることが主な理由です。
競走中などに故障すると、最悪の場合は安楽死を選ばざるを得ません。
そうなれば、優秀なサラブレッドが遺伝子を残す機会を失い、馬主としても貴重な収入源を失ってしまうのです。
そのため、種馬として商品価値のある牡馬は、大事をとって早めに引退させ、種馬へと転身させることが多くなっています。
たとえば牡馬の「ディープインパクト」は、キャリアを通じて14戦しか走りませんでした。
現在は種馬として暮らしており、種付け料は4,000万円といわれます。
1年間で200頭に種付けを行うと、ディープインパクトは、年間で80億円も稼ぎ出すのです。
ディープインパクトの生涯獲得賞金は14億5,455万円なので、単純計算すれば、約2ヶ月で現役時代の獲得賞金を上回るお金を稼ぎます。
このチャンスを逃さぬように、優秀な牡馬ほど早く引退し、妊娠・出産に時間がかかり、稼ぎにくい牝馬は、現役を長く続けることが多いのです。