IR法が成立したことで、日本にカジノが誕生するまでのカウントダウンがスタートしました。
厳密にいえば、これから日本にできるのは単純なカジノではなく、カジノを含む統合型リゾート(IR)です。
そこで気になるのは「統合型リゾートとは何なのか」という話ではないでしょうか。
今回は、統合型リゾートとカジノはどう違うのか、そして日本の統合型リゾート候補地はどこなのかをご紹介します。
統合型リゾートを設置するとどんなメリットがあるのか、そして「カジノ反対派」が懸念する問題とは何なのか、この記事で詳しく解説していきましょう。
統合型リゾートとは
画像引用:マリーナベイサンズ公式サイト
統合型リゾートとは、ホテルや劇場、展示会場、ショッピングモールといった施設が集合した複合施設を指す言葉です。
統合型リゾートは英語で「Integrated Resort」と呼ばれ、これを略して「IR」と呼ばれることもあります。
冒頭でご紹介している画像は、世界的な統合型リゾート「マリーナベイサンズ」です。
日本に誕生する予定のカジノは「カジノを含む統合型リゾート施設」と呼ばれます。
つまり、街中にポツンとカジノが誕生するわけではなく、統合型リゾートのなかにカジノも含まれているという考え方です。
2016年に「IR推進法」が、2018年には「IR実施法案」が成立し、日本に統合型リゾートが誕生することはほぼ確定しました。
カジノと統合型リゾートはどう違うのか
カジノは「ルーレットなどのカジノゲームを楽しむ施設」で、統合型リゾートは「ホテルや劇場などさまざまな施設が集合したリゾート」です。
ショッピングセンターでたとえるなら、建物全体が「統合型リゾート」で、そのなかにある映画館などの施設そのものが「カジノ」という関係性にあると考えるといいでしょう。
しかし、カジノは必ずしも統合型リゾートの一部であるとは限りません。
カジノ周辺に劇場などの施設は一切なく、カジノ施設だけが設置されているというケースは、頻繁に見受けられます。
日本が目指すのはそのような形のカジノではなく、老若男女が楽しめるエンターテイメントのひとつにカジノがある、というものです。
統合型リゾートの典型例「マリーナベイサンズ」の中身
画像引用:マリーナベイサンズ公式サイト
冒頭でご紹介したマリーナベイサンズは、日本が目指す統合型リゾートを象徴する施設といえます。
マリーナベイサンズにはどのような施設があり、どんなイベントが開催されているのかをまとめてみましょう。
- カジノ
- 2,500室のホテル
- 屋上プール
- アートサイエンスミュージアム
- シアター
- 45,000人収容のイベント用スペース
- レストラン、バー
- ショッピングモール
- ナイトクラブ
- レーザーショー
このように、マリーナベイサンズは、カジノだけを楽しむための施設ではありません。
目玉の施設はカジノですが、カジノを利用しない人でも楽しめる施設が集合しているのが、統合型リゾートです。
単なるギャンブル場を増やすという計画ではなく、観光の新しい柱を作るという目的で成り立っているのが統合型リゾートと考えましょう。
統合型リゾートを設置する5つのメリット
統合型リゾートという考え方は、日本人に浸透しているとはいえず、「カジノができる=ギャンブル場が増える」という考えによって、統合型リゾートに強く反対する人は多く存在します。
しかし、統合型リゾートを設置することにより、以下のようなメリットを、国全体や地方自治体が得られる可能性が大です。
- 国内外から多くの観光客を見込める
- 地方自治体の税収が上がる
- 地域に新しいランドマークが誕生する
- 空港や最寄り駅からのインフラが整備される
- 新しい雇用を創出できる
上記5つのメリットを、順番に解説します。
国内外から多くの観光客を見込める
統合型リゾート誕生によるひとつ目のメリットは、人の行き来が活性化されることです。
日本政府が公認するカジノが誕生するのは歴史上はじめてのことなので、全国から統合型リゾートに向けて、観光客が殺到することでしょう。
一流ホテル・レストランの誘致も見込めるため、カジノに興味のない人も、次の旅行先として統合型リゾートの所在地を選ぶかもしれません。
話題性が抜群の施設なので、ユーチューバーやインスタグラマーといったインフルエンサーが訪れ、流行の発信基地となる可能性も大です。
また、日本にとって外国人観光客(インバウンド)は、外貨の獲得手段として貴重な存在といえます。
しかし、現時点では日本にカジノがないため、旅先のカジノで遊びたいと考えている外国人を逃しているのが現状です。
統合型リゾートを設置すれば、より多くの外国人観光客の来日を見込めるようになるでしょう。
地方自治体の税収が上がる
地方自治体にとってもっとも大きなメリットは、税収が上がることです。
一例として統合型リゾート候補地のひとつ神奈川県横浜市では、IRによる地方自治体の増収効果を、納付金・入場料・法人市民税・固定資産税・都市計画税を合わせて、年間820~1,200億円と見積もっています。
横浜市における平成30年度の法人市民税は620億円なので、統合型リゾートによる増収効果が、いかに大きいかがわかります。
地方自治体の財政が潤えば、地域が市民に向けたサービスに使える予算が増え、市民も多くのメリットを感じられるようになるでしょう。
地域に新しいランドマークが誕生する
画像引用:マリーナベイサンズ公式サイト
統合型リゾートの構想は、既存のホテルや施設の一室にカジノが入居するといったものではありません。
広大な土地を整備し、再開発して新しい施設を作り上げていきます。
そのため、地域を象徴するような新しいランドマークが誕生することも、市民にとって大きなメリットです。
統合型リゾートが誕生すれば、今までにはなかった規模のショッピングセンターやレストランへ通えますし、大規模なイベントにも親しみやすくなるでしょう。
たとえカジノには一切立ち入らなかったとしても、家族で遊びに出かける場所として、さらにはデートスポットとしても、統合型リゾートを利用できます。
空港や最寄り駅からのインフラが整備される
統合型リゾートは、インバウンドを含む多くの人に利用されてはじめて価値を発揮します。
統合型リゾートの設置には広大な土地が必要なため、誘致予定地は空港や最寄り駅からのアクセスが悪い可能性もありますが、これを解消するためのインフラ整備にも期待できるでしょう。
その地域に住む人にとっては、統合型リゾートの誕生によって、主要駅へのアクセスが向上する可能性があります。
地域を周遊するバスの誕生や本数の増加、鉄道の新駅建設、そして周辺の道路整備などを通じて、地域環境を向上させられることもメリットです。
新しい雇用を創出できる
産経新聞の記事によると、マリーナベイサンズは、2010年から2017年までの7年間で9,500人もの新規雇用を創出したといいます。
ホテルやレストラン、ショッピングセンター、イベントに関連するスタッフやカジノディーラーなど、日本国内でも非常に多くの雇用が創出されることは確実でしょう。
新規雇用が創出されると、統合型リゾートで得た賃金が地元で使われることで地域が活性化し、それが地域の税収アップにもつながります。
このような好循環を繰り返すことにより、統合型リゾートのある地域のみならず、日本全体の景気向上にも期待できるのです。