横浜市がIRを撤回したいのはなぜ?誘致予定場所は今後どうなるのか - オンラインカジノTV

2021年8月22日におこなわれた横浜市長選挙で、IR撤退を表明していた山中竹春氏が、33%以上の得票率を獲得して当選を果たしました。
山中市長はその後の会見でもIR誘致から撤退する方針を変えず、横浜市のIR誘致取りやめは、事実上確定しています。

 

横浜市民は、なぜIR誘致にNOを突き付けたのでしょうか。
また、横浜市への進出を目指していたIR事業者はどのような反応を見せているのでしょうか。
誘致が予定されていた山下ふ頭の未来はどうなるのか、現時点での見通しをまとめていきます。

 

横浜市がIRから撤退…なぜ反対派が賛成派を上回ったのか

神奈川県横浜市では、前横浜市長である林文子氏が中心となり、財源の確保等を目的としてIR誘致を推進してきました。
しかし2021年8月におこなわれた横浜市長選により、IR誘致を表明していた林氏・福田氏は落選、IR撤回を公約に掲げた山中竹春氏が当選を果たしています。

 

この結果により、横浜市のIR撤回は事実上確定しました。
それでは、なぜ横浜市民はIRと共存しない道を選ぶことにしたのでしょうか。
横浜市長選挙までの流れをまとめていきます。

 

横浜市民によるIR反対の声は根強かった

 

そもそも、市長選がおこなわれる前から、横浜市民のIRに対する反応は冷ややかなものでした。
「IR=カジノ、カジノ=バクチ」というイメージが根強く、市民団体が発足して反対活動をおこなっていたほどです。
2020年には、IR撤回に向けた住民投票を請求する署名を19万人分集めています。

 

市民団体がIR撤回を要求していた主な理由は以下の3点です。

 

  • 横浜市がバクチ都市に変わってしまう
  • ギャンブル依存症対策が不十分である
  • 街の治安が悪化してしまう

 

IRは「カジノを含む統合型リゾート」の略であり、実際にはホテルやレジャー施設などを建設し、そのなかのコンテンツのひとつとしてカジノを設置するというものです。
しかし「IR=カジノ」という印象は横浜市民にとって根強く、ネガティブなイメージとして定着していたことが、今回のIR撤回につながりました。

 

横浜市長選挙でIR賛成を表明していたのは林氏・福田氏の2名のみ

2021年の横浜市長選挙で、IR賛成・推進を表明していたのは、現職の林氏と福田氏の2名のみでした。
IR賛成とみられていた有力候補の小此木氏がIR反対派へと転じたことにより、この段階で、IR誘致の有無に関する大勢は決していたともいえます。

 

また、林氏は2017年の横浜市長選挙で「IRの白紙撤回」を掲げて当選を果たしたという流れがありました。
その後、2019年にIR推進を表明した結果、市民からの反発を受けており、今回の選挙でも苦戦。
最終的には196,926票で3位という結果に終わっています。

 

当選したのはIR撤退を公約にしていた山中氏

横浜市長選挙の結果、当選を果たしたのはIR撤退を公約に掲げていた山中氏でした。
山中氏は得票率33.59%となる506,392票を集め、2位の小此木氏に18万票以上の差を付けています。
鶴見区を除く全16区で最多得票を獲得するという、意外なほどの圧勝を収めたという結果です。

 

この選挙結果により、横浜市のIR撤退は事実上確定しました。

 

横浜市のIR撤退表明を受けた事業者の反応

横浜市への進出を表明していたIR事業者は、以下の2社でした。

 

  • メルコリゾーツ&エンタテインメント
  • ゲンティン、セガサミーによる合同プロジェクト

 

なかでもメルコリゾーツ&エンタテインメントは熱心で、横浜市に本拠地を置くサッカーチーム「横浜F・マリノス」のスポンサーとしても活動。
横浜市における知名度の向上と、IR事業への理解を深めるために尽力していました。

 

引用:横浜F・マリノス公式サイト

 

これらのIR事業者は、横浜市長選挙の結果を受けて、どのような反応を示しているのでしょうか。
2社の動きをまとめていきます。

 

メルコリゾーツ&エンタテインメントは横浜市内の事務所を閉鎖

横浜市におけるIR事業者の最有力候補とみられていたメルコリゾーツ&エンタテインメントは、横浜市長選挙の結果を受け、横浜市内に構えていた事務所を閉鎖しました。
同社は日本市場に引き続き注視すると表明していますが、本命だった横浜市からの撤退を余儀なくされています。

 

また、横浜市長選挙がおこなわれる約2ヶ月前には、2年間にわたって継続してきた横浜F・マリノスへのユニフォーム広告掲載を終了しています。
この時点ですでに「横浜市における事業継続は難しい」と判断していた可能性も考えられるでしょう。

 

ゲンティン・セガサミーはIR入札への参加中止を表明

横浜市への進出を目指していたゲンティンとセガサミーも、横浜市長選挙の結果に失望を隠していません。
ゲンティンはこの結果を「予期せぬ出来事」、セガサミーも「IR事業への参画を中止せざるを得ない」という旨をプレスリリースで発表しています。

 

合同で横浜市への進出を計画していた2社ですが、2021年9月10日におこなわれた山中新市長による所信表明を受け、IR入札への参加中止を正式に表明しました。
メルコリゾーツ&エンタテインメントに次ぐ撤退表明により、横浜市への進出を目指すIR事業者はなくなっています。

 

横浜市のIR撤退に横浜市民はどう反応しているのか

横浜市長選の結果は、IR撤退を表明していた山中氏の圧勝に終わりました。
しかし、インターネット上の評判を見てみると、横浜市民は必ずしもIRからの撤退を歓迎しているわけではなさそうです。
IR賛成派・反対派両方の反応を見てみましょう。

 

IR賛成派の意見

まずは、IR誘致に賛成していた人の意見を見てみます。

 

 

 

こちらは経済の悪化に対するマイナスの影響を懸念した人によるツイートです。
反対派の一部には「利益が海外に流出すること」に難色を示す人がいますが、これに対して反論しています。

 

 

横浜市は経済面・流通面の問題により、公立中学校への給食の配給を実現できていません。
IRによる税収で給食の配給を実現させられるのではと期待していた人にとって、この選挙結果に失望を隠せないようです。

 

IR反対派の意見

続いて、IR反対派の意見も見てみましょう。

 

 

明確な理由は明かしていませんが、IR誘致撤回を歓迎している人のツイートです。
しかし、先ほどの賛成派によるツイートを見ても明らかなように、IR誘致に賛成している横浜市民は、多く存在します。

 

 

有権者のなかには、IR云々とは無関係に、特定の政党を倒すために山中氏に投票したという人もいるようです。

 

 

「IRそのものが死に体」と話す人もいます。
コロナ禍で各国への渡航制限が厳しく、リアルカジノが経営に苦戦していることは事実です。
しかし、現時点で大手カジノ事業者は倒産しておらず、日本国内のカジノ開業も2025年以降とみられることから、日本のIRへのコロナの影響は軽微でしょう。

 

横浜市がIR誘致を検討していた山下ふ頭の今後はどうなる?

 

引用:横浜市公式サイト

 

横浜市がIR誘致を検討していたのは、山下ふ頭です。
かねて再開発を目指してきたエリアですが、横浜市の中心部からほど近く、羽田空港からのアクセスのよさも評価されています。
カジノ誘致からの撤退が決まった今、山下ふ頭はどのように進化していくのでしょうか。

 

横浜市が誘致を予定していた山下ふ頭とは

1963年に完成した山下ふ頭は、横浜における港湾の中心として機能してきましたが、本牧ふ頭・大黒ふ頭の誕生によって、活躍の機会を失っていました。
再開発案も多く、「横浜ドーム構想」を経て、IR誘致先として落ち着いたという歴史があります。

 

山下ふ頭には、みなとみらい線の「元町・中華街駅」から徒歩5分でアクセス可能です。
周囲には横浜中華街、山下公園、マリンタワーといった横浜を代表する観光スポットが点在し、高級ホテルや観覧車、ランドマークタワーなどがあるみなとみらい地区にもアクセスしやすい環境といえます。

 

また、みなとみらい線に接続できる横浜駅までは、羽田空港から電車で30分という距離です。
海外から訪れるインバウンドにも十分に対応できるアクセスのよさをもつことも、カジノ誘致先を山下ふ頭に一本化した理由といえるでしょう。

 

山中市長が打ち出す「ハーバーリゾート構想」の中身

引用:朝日新聞デジタル

 

山中市長を支援した横浜港ハーバーリゾート協会では、山下ふ頭の再開発案として「ハーバーリゾート構想」を打ち出しています。
カジノを完全に除外した構想で、以下のような内容の事業を伴う再開発を目指すようです。

 

  • 国際展示場の設置
  • クルーズ船拠点としての機能
  • 中長期滞在型ホテルの設置
  • コンサート会場の設置
  • 物流施設の設置や住居の設置

 

これらの機能は、カジノを含むIR事業においても基本的には、ほぼすべてが含まれる予定でした。
カジノ抜きのIRともいえる構想ですが、外国資本の投入が難しいなか、限られた横浜市の財源で、どれだけの施設を建設できるのかという点に注目が集まります。

 

メルコリゾーツが公開した幻のIR完成予想図

引用:Inside Asian Gaming公式サイト

 

横浜市からの事実上の撤退を表明したメルコリゾーツ&エンタテインメントも、IR完成予想図を公開しました。
先ほどのハーバーリゾート構想と比較すると、どうしても近未来的で豪華という印象が際立ちます。
市長選の結果により、この構想は幻に終わってしまいました。

 

メルコ社は「世界で最も先進的な保護措置を設け、その過程で厳格な倫理的ビジネス行動をとり、このリゾートを設計した」と述べています。
同社はマカオの象徴のひとつでもある「モーフィアス」の設計を故ザハ・ハディド氏に依頼した実績があるだけに、予想図のような施設の誕生が実現していた可能性は高いでしょう。

 

横浜市の撤退を受けて、日本全国のIRにどのような動きが出るのか

横浜市では、IR撤退という大きな動きが生まれましたが、これは日本全国にどのような影響を与えるのでしょうか。
その他の自治体による動きも確認しながら、日本全体のIRの未来について考えてみましょう。

 

その他のIR候補地は誘致の意思を変えていない

現時点では、大阪市や長崎市など、多くの地方自治体がIR誘致に名乗りを上げています。
横浜市によるIR撤退という結果を受けた現在も、その他の自治体は誘致の意思を変えていません。
これらの地域は予定どおりに、IR誘致を進める可能性が高いでしょう。

 

横浜市に代わる第3のIR誘致先が誕生する可能性が高い

横浜市長選挙の結果が出るまで、横浜市はIR誘致先の最有力候補のひとつと見られていました。
全国で3つの都市にIRが誘致される予定であることから、横浜市に代わる第3の誘致先が誕生する可能性が高いものと思われます。

 

【2021年9月時点でIR誘致の意思を示す自治体】

  • 東京都(台場)
  • 愛知県(常滑、名古屋)
  • 大阪府(夢洲)
  • 長崎県(ハウステンボス)
  • 和歌山県(マリーナシティ)

 

今後、政府による選定がおこなわれ、上記3ヶ所のなかから最大3つの都市にIR設置の許可が下ります。
現段階で有力と考えられているのは大阪府と長崎県で、それ以外の都市にとっては、横浜市の撤退は、千載一遇のチャンスになるでしょう。

 

横浜市がIRを再誘致する可能性はあるのか

横浜市民による反応を見てもわかるように、市内へのIR誕生を望む市民は決して少なくありません。
それでは、横浜市がIRを再誘致する可能性はあるのでしょうか。
横浜市にIRが誕生するシナリオは、以下の3パターンです。

 

  • 山中市長がIR反対の意思を翻し、賛成に転じる
  • 何らかの事情で山中市長が早期退任し、IR推進派が新市長に着任する
  • 次回のIR誘致先選定で再度立候補する

 

山中市長の意思が変わることや、早期退陣をすることは現実的といえません。
可能性があるとすれば、次回のIR選定で再立候補をすることでしょう。
ただし、ハーバーリゾート構想などによって山下ふ頭の再開発が完了した場合は、誘致先を用意することが困難です。

 

結論としては、横浜市内にIRが誕生する可能性は、ほぼゼロといわざるを得ません。

 

まとめ

 

2021年8月に実施された横浜市長選挙の結果を受けて、横浜市はIR誘致から撤退することが決まりました。
IR事業者の候補だったメルコリゾーツ&エンタテインメントと、ゲンティン・セガサミーの合同プロジェクトは、いずれもすでに横浜市からの撤退を表明済みです。

 

横浜市にIRが誕生する可能性は限りなくゼロに近付きましたが、その他のIR候補地は誘致の方針を翻していません。
今回の市長選の結果が日本全体に与える影響は少なく、予定どおりのスケジュールで最大3ヶ所にIRが誕生する可能性が高いでしょう。

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